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郷土料理は、その地域の風土や環境に根付いた食材を用いて、食べ継がれてきた日本特有の和食の伝統食です。しかし味付けには、味噌や醤油を使うことが多いので塩分量が気になります。塩の摂り過ぎは高血圧をはじめ、生活習慣病と深く関わりがあることから、郷土料理でも、減塩という目線を取り入れることが必要になってきています。
今回、ニギスの団子汁で味付けの主となる豆味噌で減塩をしました。減塩と同時に豆味噌のうま味成分も減りましたが、うま味調味料を使うことでその美味しさを充分補えることがわかりました。さらに魚本来のうま味をより引き出し、生臭みも軽減したことで、魚嫌いな人にも抵抗なく、幅広い世代で食べやすくなったと思います。
近年は家庭環境や食生活の多様化により、郷土料理を作る機会も食べる機会も減少していく傾向にありますが、地元の食材、味、作り方を受け継ぎながら、うま味調味料を上手に活用することで、郷土料理も健康的な食文化に繋ぐことができると思います。うま味調味料の役割は大きく、さらに色々な使われ方により、様々な効果が期待できる可能性が広がっていくことでしょう。
- ニギスという郷土の食材を使った、家庭で日常的に食べ継がれている料理を、伝統的な作り方に忠実に減塩に挑んでおり、食文化を伝承しようとする意気込みがうかがえます。
- 現代では食卓にのぼる頻度が少なくなってきている「魚」と「味噌汁」を食することができる栄養バランスの良い料理を、次世代の健康を考えておいしく減塩した提案である点が評価できます。
- 団子に少量のうま味調味料を加えるだけというシンプルな工夫ながら、約25%の減塩を実現しいています。ニギスのうま味成分イノシン酸とうま味調味料のうま味成分グルタミン酸によるうま味の相乗効果によって、大幅なおいしさのアップにつながりました。
- うま味調味料の使用によって魚くささをやわらげ、フードプロセッサーの使用で手軽に作れるように調理方法を工夫するなど、若い世代にも受け入れやすい提案です。
- 減塩のためニギスの団子に加える食塩を減らしてみましたが、煮込むと団子がくずれてしまったため、団子に加える食塩は減らさず、その代わりに、団子に加える豆味噌を減らすことで減塩し、それによって減ったうま味を、うま味調味料を加えることによって補いました。
- うま味調味料を、団子に加えた場合と汁に加えた場合とで、比較検討したところ、団子に加えた方がおいしくなることが分かりました。ニギスのイノシン酸とうま味調味料のグルタミン酸との間にうま味の相乗効果が起き、うま味が強まったためと考えられます。
- うま味調味料を加えてニギスの団子を作り、水から団子を煮ることによって、だしを使用せずに簡単においしく作ることができました。
- うま味調味料の活用によって、ニギス本来のうま味を引き出し、生臭みも軽減することができました。次世代の若者や子どもが、魚が苦手である理由の一つ「生臭み」をやわらげる効果的な方法であると考えます。
A 伝統レシピ |
B 減塩レシピ |
C <うま味調味料活用>減塩レシピ |
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材料名 | 配合 | 塩分 | 配合 | 塩分 | 配合 | 塩分 |
ニギス | 50g | 0.25g | 50g | 0.25 | 50g | 0.25g |
豆味噌 | 9g | 1g | 4.5g | 0.5 | 4.5g | 0.5g |
塩 | 0.5g | 0.5g | 0.5g | 0.5 | 0.5g | 0.5g |
うま味調味料 | - | - | - | - | 0.2g(2ふり) | 0.06g |
里芋 | 15g | - | 15g | - | 15g | - |
人参 | 5g | - | 5g | - | 5g | - |
ねぎ | 2.5g | - | 2.5g | - | 2.5g | - |
水 | 200ml | - | 200ml | - | 200ml | - |
三つ葉 | 適量 | - | 適量 | - | 適量 | - |
TOTAL塩分 | - | 1.75g | - | 1.25g | - | 1.31g |
減塩率 | - | - | - | 29% | - | 25% |
- ニギスは三枚におろし、包丁で叩いて、細かくしてすり鉢ですり潰す。
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1に塩を加えよく混ぜて、さらに豆味噌、うま味調味料を加えてすり身にする。
(1、2の工程はフードプロセッサーの使用も可。) - 芋、人参は長さ2cmの太めのせん切りにし、ねぎは小口切りにし2に加えてよく混ぜ、やや平たい団子の形に整える。
- 鍋に水を入れて煮立たせ、3の団子をそっと入れ、再び煮立ったら、弱火で約15分煮る。
- お椀に団子を盛り付けて、汁を注ぎ、三つ葉をのせる。
漁獲量の多い蒲郡の特産物であるニギスは白身魚の深海魚です。どんな料理にも合いますが、蒲郡では特にすり身にした団子汁が親しまれています。ニギスは身がやわらかく、脂にうま味があり、野菜と豆味噌で作った団子からは、美味しいだしが出るので、だしいらずの汁物です。
H28年度の国民健康・栄養調査の結果からもわかるように、栄養価の高い魚の摂取量が減少しています。ニギスの団子汁には、全ての年齢層の方に摂って欲しい栄養素がバランスよく入っており、健康維持・増進につながる簡単な魚料理なので、次世代に伝えたい料理です。